「自社の経営ビジョンを知っていますか?」と聞かれて、しっかり答えられる社員の割合は、どれくらいでしょうか。会社によって異なると想定されますが、自社の経営ビジョンが分からない、という社員は意外に多いのではないでしょうか。
経営ビジョンは会社を経営するにあたって非常に重要です。経営層はもちろん、従業員に浸透していることが望ましいでしょう。
本記事では、経営ビジョンとは何か、経営ビジョンと経営理念の違いや、経営ビジョンを策定することのメリットなどについて解説します。経営ビジョンを浸透させる方法についても紹介しているので、経営ビジョンが浸透しているか不安に感じた経営層の方や社内広報担当者はぜひ参考にしてください。
目次
経営ビジョンとは?
経営ビジョンは、企業が将来どうありたいか、どうあるべきかということを、経営目線から策定したものです。経営理念と並行して常に掲げられる場合もあれば、「2030年までの長期経営ビジョン」のような形で、定期的に更新される場合もあります。
また、経営ビジョンの内容をどこまで具体的なものにするか、自社の商材やサービスをどの程度絡めるかも企業によってまちまちであり、経営ビジョンにはその企業の個性が強く出ることになります。
経営理念との違い
「経営理念と並行して」と説明しましたが、経営理念と経営ビジョンは非常に混同されやすい概念です。
経営理念は、企業の経営に関する基本的な考え方や価値観のことを指し、その企業の存在意義や経営方針などを表現したものです。企業の対外的な姿勢を表す上で、非常に重要な役割を果たします。
一方、経営ビジョンは、経営理念を実現するためにはどのような取り組みが必要かなどを踏まえて、より具体的な今後の方針を描いたものです。つまり経営ビジョンは、経営理念を基にして作られているということになります。
社会の情勢や市場の環境などが変化することによって、企業が取るべき行動は変わる可能性がありますから、経営ビジョンは定期的に見直されることも多いです。
しかし、企業の経営に関する基本的な考え方や価値観は社会や市場の変化によって変わるものではないので、特殊なケースを除いて経営理念は不変です。
経営ビジョンを設定するメリット
経営ビジョンを設定するメリットとしては、主に次のようなことが挙げられます。
- 従業員が皆同じ方向を向きながら仕事ができる
- 従業員の思考・行動の判断基準となる
- 対外的な信頼感が高まる
- 従業員が自身の未来の姿を描きやすくなる
- 経営方針が安定する
それぞれのメリットについて、紹介します。
1. 従業員が皆同じ方向を向きながら仕事ができる
経営ビジョンを設定することにより、従業員は向くべき方向が分かった上で仕事ができるので、明確な意思を持って業務に取り組むことが可能になります。
また、「全ての従業員が同じ方向を向いて仕事に取り組むことができている」という意識は一体感の醸成にもつながるので、生産性の向上も期待できます。
2. 従業員の思考・行動の判断基準となる
仕事をする中で、どのように考えるべきか、どのように行動すべきか悩むケースは多々あります。しかし経営ビジョンが定められていれば、経営ビジョンに照らし合わせて思考や行動を選択できるので、従業員が迷ったり悩んだりすることも少なくなるでしょう。
業務をより効率的に行えるようになることはもちろん、前向きでポジティブな企業風土を醸成することにもつながります。
3. 対外的な信頼感が高まる
経営ビジョンは従業員だけに公表されるのではなく、ホームページに掲載したり株主総会で発表したり、対外的に知ってもらうようにすることも多いです。
自社がどのような方向性を向いて事業を行っているかを明示することで、株主や取引先などからの信頼を勝ち取ることができます。また、それに伴って企業価値の向上も期待できるでしょう。
そういった企業の姿勢は従業員からの信頼を勝ち取ることにもつながり、エンゲージメントの向上にも寄与します。
4. 従業員が自身の未来の姿を描きやすくなる
企業の経営ビジョンが示されれば、そこで働いている従業員自分の将来の姿をイメージしやすくなります。今の自分の姿と、イメージする将来の理想的な自分の姿のギャップを埋めるために何が必要かも分かってくるので、適切な形で自己研鑽を行うことができるでしょう。
5. 経営方針が安定する
明確な経営ビジョンが存在すると、経営方針が二転三転することなく安定します。
また、経営方針の見直しを行う場合でも経営ビジョンを元にして行うことで、方針にブレがなくなります。経営方針に一本の筋が通っていることは、従業員やステークホルダーからの信頼を得るためにも重要です。
経営ビジョンの作り方
実際に経営ビジョンを作成するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。
経営ビジョンを作るための具体的な手順は、おおむね次の通りです。
- 自社や競合などを含めた現状の市場環境を分析する
- 分析結果を踏まえて未来を予想する
- 予想した未来で自社がどのような役割を担うべきかイメージする
- ビジョンを言語化する
- 従業員に浸透させる
それぞれのステップについて、説明します。
1. 自社や競合などを含めた現状の市場環境を分析する
経営ビジョンの対象となる未来を予想・イメージするために、自社や競合などを含めた現状の市場環境の分析を行います。
市場分析の方法には、自社(company)、顧客(customer)、競合(competitor)の3つの視点に立って市場環境を分析する「3C分析」や、業界の収益性を決める5つの競争要因(同業他社との競合、新規参入の脅威、代替品の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力)から業界の収益構造や自社の競争優位性を探る「5フォース分析」など、さまざまな方法があります。どの手法を用いて分析を行うかは自由なので、自社の業態や取り扱っている商材・サービスなどに即した手法を用いて、分析を行いましょう。
2. 分析結果を踏まえて未来を予想する
現在の市場環境に関する分析結果が出たら、それを基に未来の予想を行います。未来を予想する際にはシンクタンクやリサーチ会社などから発表されているデータや、その分野のオピニオンリーダーの意見などを参考にすることも効果的です。
どのようなデータ・仮説を参考にするかによって、未来予想の精度や方向性も変わってくるので、しっかりと吟味した上で行うことが重要です。
3. 予想した未来で自社がどのような役割を担うべきかイメージする
予想した未来図において、自社の存在感が小さくなってしまうのは好ましくないので、将来的に自社はどのような役割を担うべきかをイメージします。
このとき、自社の存在感を出そうとするあまり、自社の経営理念とはかけ離れた部分で努力しようとするのはご法度です。あくまでも自社の経営理念と予想した未来図が重なり合う部分で、自社なりのバリューを提供することを心掛けなければなりません。
4. ビジョンを言語化する
ここまでのステップを踏めば、経営ビジョンに関する大枠はある程度できているといえるでしょう。しかし、経営ビジョンは最終的に従業員に対して公表されなければなりません。そのため、経営ビジョンを策定しているメンバー間の共通認識を言語化して、誰にでも伝わるものとして整える必要があります。
経営ビジョンはその企業の顔となります。表現方法などにも十分注意して、自社らしさが表れているものにするよう心がけましょう。
5. 従業員に浸透させる
経営ビジョンが策定されたら、それを従業員に浸透させることが重要です。浸透させるといっても「毎日10回経営ビジョンを音読させる」というような方法ではありません。
経営ビジョンに基づいて経営管理や事業活動を行い、経営ビジョンに沿って企業としてのあるべき姿へと向かっていくことで、それぞれの従業員に自然と浸透していきます。
そのため経営ビジョン策定後は、経営ビジョンに沿った意識や行動の変容をいかに早く引き起こせるかが、大きなカギを握るでしょう。
経営ビジョンを浸透させるためにはどうしたらいい?
経営ビジョンの作り方の最終ステップとして、経営ビジョンを従業員に浸透させることをお伝えしましたが、実はこのステップがもっとも重要です。従業員に浸透していない経営ビジョンは、単なるお題目に過ぎません。
経営ビジョンを従業員に浸透させるためには、「認知→理解→共感→実践」という流れを経る必要があります。
まず認知に関して、経営ビジョンはホームページなどに掲載されていることも多いため、その企業で働いている方であれば存在を認知している方も多いでしょう。しかし、その中身をきちんと理解しているかどうかは別の話なので、実際の業務と経営ビジョンをひもづけて説明し、経営ビジョンを理解してもらう必要があります。
その後、経営ビジョンによって描かれる未来と従業員が目指すべき姿が一致する(一致はしないにしても、少なくとも同じ方向を向いている)ことによって、従業員からの共感が得られます。
そして、共感をベースにしてビジョンに基づいた行動を従業員が実践することによって、従業員が経営ビジョンを「自分ごと」として受け入れられるようになるでしょう。
経営理念を浸透させる方法については、こちらのコラムでも詳しく紹介しています。
■関連コラム
経営理念を浸透させるには? 社内で浸透しない原因と成功させるポイント
社内広報の手段と特徴
経営ビジョンは浸透させてこそ意味がある
経営ビジョンを掲げている企業は多いですが、それがどの程度従業員に浸透しているかについては、それぞれの企業でまちまちです。
従業員に浸透している経営ビジョンは従業員自身の明確な指針や判断基準になるので、経営ビジョンの浸透具合によって企業としての競争力には大きな差が生まれます。
経営ビジョンを策定する際は、きちんとしたステップを経て作成するよう心掛けることはもちろんですが、策定後に従業員にしっかりと浸透させることに主眼を置きましょう。
経営ビジョンを周知するために有効な方法の一つに、社内報があります。社内報で定期的に配信することで、従業員の目に入りやすく、自然と経営ビジョンを覚えられる環境を作ります。経営ビジョンに関する考え方や展望などを経営層から発信することで、理解や共感も促せます。
特に、Web社内報なら、Web上で社内報を閲覧できるので、テレワークや時短勤務などのさまざまな働き方の従業員に対しても幅広く配信可能です。いつでも見られ、定期的に読み返すこともできるため、経営ビジョンを社内全体に徐々に浸透させることができます。
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