動物用医薬品の開発・製造・販売等を手掛ける共立製薬株式会社、衛生的で快適な環境を創造する日本カルミック株式会社などを傘下に持つ共立ホールディングス。2021年9月、まずは共立ホールディングスと共立製薬に向けて、それまで紙ベースで発行してきたグループ社内報「TSUNAGU」をデジタル環境に移行し、人と人とが手をつなぎ交流する場「AKUSHU」としてスタートしました。
導入からわずか1年で2022年度の社内報アワード「Web・アプリ部門」でシルバー賞を受賞。社内報アプリ導入にいたるまでの経緯や、記事の制作体制などについて広報部の皆さまにお話をお聞きしました。
【導入目的】
- デジタル環境での情報共有の場づくり
- 社員同士の相互理解や交流促進の場を整備する
- 企業理念であるMVVの周知と文化浸透を図る
【課題】
- 紙のままでは発信した情報の拡散や効果について分析ができない
- 紙の社内報ゆえに情報収集と公開のタイムラグが生じる
- コロナ禍でリモートワークが進み、紙の社内報の配布が困難に
【効果】
- 閲覧傾向の分析と、そこから新たな課題設定が可能に
- タイムラグが減り、必要な情報が必要なタイミングで届くように
- 経営理念の理解と浸透に貢献
- 社内外のプロによる編集やデザインの力により、寄稿者や取材先から高い満足を得る
- 社員のペット自慢やオフなどプライベートな情報により交流が生まれたケースも
■共立ホールディングス株式会社
- 事業内容:共立グループの戦略立案・管理、グループ経営資源の最適配分、グループ連結財務管理等
- 従業員数:1,727人(グループ全体)※2022年5月末時点
- 広報担当者様:高橋由和様、山崎正治様、養田亜佳音様、三浦はる菜様
コロナ禍と企業理念の新設が社内報のデジタル化を後押し
——社内報アプリを取り入れるようになったのは、どんな経緯からだったのでしょうか?
高橋さん:もともと私たち広報部は、年4回の社内報と新入社員紹介を印刷物として発行していました。しかし、紙の宿命としての情報のタイムラグと、その情報がどういう風に届いているのか追いかけられないという課題がありました。
養田さん:そんなタイミングでコロナ禍になってしまい、リモート出社や、工場・営業所への訪問禁止など、物理的に人と会って印刷物を配布することができなくなりました。そこでそれまで紙に印刷していた社内報をPDFにしてメールで配布するようにしたんですね。すると、印刷のタイムラグもないし、印刷代もかからない。編集作業を効率化すれば月1回発行でもいけるのではと思い、PDFでの社内報を1年間続けました。
高橋さん:デジタル化したように思えますけれど、社内報がどういう風に読まれて、どんな情報を送ったら社員同士の交流促進や風通しのよさに貢献できるのか、といった分析ができないという課題は残ったままでした。
PDFでの社内報発行でデジタル化の可能性を感じたので、経営陣を説得して、ウェブ上での社内報に切り替えるべく数社にお声がけしました。プレゼンテーションをいただいた上で、弊社の状況に一番合いそうだったウィズワークスさんの社内報アプリに決めました。
——共立ホールディングスさんの社内報アプリはサムネイルをはじめとしたビジュアルがすてきで、思わず目を引きます。
高橋さん:ありがとうございます。実は広報部のメンバーに2名デザイナーがいるんです。2016年ごろ、会社としてのビジュアルアイデンティティをコントロールする必要があるだろうと、デザインまわりを内製できるようにデザイナーを採用しました。
彼らはそれまで紙ベースで仕事をしてきたので、ウェブのデザインは今回が初でしたが、新しい分野に挑戦できると前向きに捉えてがんばってくれています。
明確化した3つの目的のために毎週火曜日に記事を配信
——紙の社内報からウェブになったことで、制作体制やスケジュールはどうかわりましたか?
養田さん:毎週火曜日に何らかの記事が配信されるように、あらかじめ記事のコンテンツを決めた上で、寄稿や取材をお願いして記事をつくっています。それ以外にニュースが別途差し込まれることもあります。
そもそも社内報アプリを始めることになったのが、会社のプロジェクトとして1年以上かけて策定した共立製薬の経営理念「MVV」(ミッション・ビジョン・バリュー)ができあがったタイミングで、MVVの社内浸透を担うことも期待されていたんです。
そこで、社内報アプリを始める段階で、3つの目的を定めました。1つ目は「MVVの浸透」。2つ目は「社員の人となりを紹介しお互いを知る」。3つ目は「各部署を越えた横のつながりを強化する」です。
会社として社内の異動は頻繁にあるわけではないので、同じ社内でも、隣の部署や、営業所、工場にどんな人がいて、どんなことが起こっているのかよくわからないんですね。例えば営業だったら、自分たちが売っている商品を「どんな人がつくっているのか」を知れたら、商品の提案とか売り方も少し変わるかもしれない。そういう目に見えないコミュニケーションのようなものを生み出していければと思います。
高橋さん:いちばん最初にどんな記事をつくるか、大きなカテゴリと、取材や寄稿をお願いする人なんかも広報部のメンバーでざーっとリストアップしたんですよ。
養田さん:今も人気のカテゴリになっていますが、自分の飼っているペット自慢は初期から入っていました。あとは、オフの過ごし方紹介、MVV一問一答、歴史をひもとくシリーズ、あとは本部長からの寄稿もあります。
山崎さん:本部長シリーズは、純粋におもしろいというのもありますし、上長が何を考えているか部下として知っておかないといけない……みたいなニーズで読まれているというのもあるようです。意外と本部長も、ほかの本部長の記事がどんな内容で、周りがどんな反応なのかは気にされているみたいです。
——社内報アプリのPRやアクセス率アップの施策などはどうされましたか?
養田さん:本格的なスタートを迎える前に告知の動画をつくって、社内イントラの目につくところに張ってもらったり、もうすぐ始まりますというメルマガを発行したり。役員クラスの会議に出て告知と詳しい内容の紹介もしました。
また、みんなが見る動機づけとして本部長の記事は、営業や生産など、すべての本部長に登場してもらうようにしました。
高橋さん:掲載されている情報が自分にとってどれだけ近いのか、というのはやはりアクセスする動機になりますね。
——記事の編集業務はどういう感じで進めていますか?
高橋さん:養田さんを中心に進めていますが、もう一人、業務委託でプロの編集者に参加してもらっていて、編集的なアイデア、例えばタイトルの付け方だったり、紹介文の入れ方だったり、また具体的な記事の方向性といったものを提案いただいています。
三浦さん:取材したものも、寄稿していただいたものも、基本的にすべてこちら側で編集するようにしています。寄稿の場合は指定した文字数よりも多いこともあるので、文章をカットしたり、リライトしたりして、全体的なバランスを整えた上で公開するようにしています。
高橋さん:2回目の寄稿依頼をしたときに、皆さん好意的に受けていただけるので、編集方針については信頼していただけているのだと思います。推測ですけれど、自分の書いたものや言ったことが、読みやすい形になっていれば、結果として自分のためにもなるので、そういう意味で丁寧な仕事が次につながっていくというのはあると思います。
三浦さん:ご本人には事前のチェックをしてもらうようにはしていますが、社内報アプリがスタートしてから今まで、ダメ出しされたことは一度もないです。
高橋さん:おかげさまで「こんな話があるけど、どう?」と掲載できそうなネタを紹介されることもふえてきました。広報部のメンバーだけではやはりマンパワーが足りませんので、ネタを持ちかけてもらえると大変ありがたいです。
養田さん:製薬会社なので、いろいろな学会や研究発表に視察として参加する部署があるんですが、彼らからご相談いただいて、視察の内容を記事化したことがあります。視察そのものの内容が伝わるだけでなく、関係部門以外の人たちにとっても、こういった学会に参加することが会社の将来につながるという可能性を知ってもらえたのは価値があることだと思いました。
広報としての信用度を高めて、現場に寄り添い、社内の声を届けたい
——社内報アプリが始まって1年たちましたが、これからどういう形を目指していきたいですか?
高橋さん:1年たって部門ごとの温度差も見えてきましたので、魅力ある記事で掘り起こしを図るとともに、各現場で何が起こっていて、どんなことを考えているのか、そういったことも記事でフォローしていけるといいなと思っています。
山崎さん:今見ている人にとっても、あまり見ていない人にとっても、社内報としての存在感をさらに高める必要があると感じています。
自分の仕事の動線上にないと思うと、どうしても優先順位が下がってしまうので、「AKUSHU」を、この会社で働く上で見ておいたほうがよいという存在に変えていきたい。そのためにも、よりいっそう現場にフォーカスして、各部門が今後どんなことをやっていくのかといった、より「固め」な記事もあっていいのではないかと思っています。
また、職種ごとにパソコンとスマホ、それぞれアクセスしやすいツールも違うので、スマホで読みやすいコンテンツをつくりたいと思っています。その意味では動画の記事も充実させたいですね。
養田さん:人によって「AKUSHUは上がトップダウンで何かを伝えるために用意した場」と捉えているケースもあるようです。一方的な情報は信じられないという不信感は、広報としての信用度が足りていないということでもあるので、そこを改善していきたいです。よりいっそう現場に寄り添って、一方通行に取られないような企画にしていきたいです。
三浦さん:寄稿や取材を依頼する際に「AKUSHU見てますか?」と必ずお聞きするようにしています。すると、かなりコアに見てくださっている人がいる一方で、「実は最初だけ……」という人もいるので、リピートで見てもらえる媒体にしていきたいと思っています。
——ありがとうございました。