1918年創業、「暮らしをつくる。」を企業理念に、炊飯ジャーやステンレスボトルなどの生活用品を手掛ける象印マホービン株式会社。90年以上前から社内報を発刊し、社内広報にも熱心な100年企業です。
長く紙の社内報とWeb社内報を併用されていましたが、システムの切り替えが必要となり、2023年3月29日「社内報アプリ」でWeb社内報をリニューアルオープン。以前よりもコンテンツが作りやすくなり、載せられる企画も増えたといいます。広報部の安藤なな緒さん(集合写真前列左から2番目)にお話をうかがいました。
【導入目的】
- 社内広報全体のデジタル化を進める
- システムの切り替えが必要となったため
- 社内報の運用目的は、経営情報の伝達、社内コミュニケーションの活性化、エンゲージメントの向上
【課題】
- 以前使用していたシステムの脆弱性が発覚し、システムの切り替えが急務
- 紙の社内報のペーパーレス化も検討したい
【効果】
- セキュリティ面の課題は解決
- 通常の社内情報発信はWEBに一本化でき、紙社内報は不定期発行に切り替え
- 使いやすく、レイアウトもしやすくなり、デザイン性が向上
- 社員にフォーカスした特集記事などを増やすことが可能に
- 「男性の育休取得者の座談会」企画が制度利用促進に一役
■象印マホービン株式会社
- 事業内容:調理家電製品、生活家電製品、リビング製品などの製造・販売およびこれに附帯する事業
- 従業員数:1,314人(2023年11月20日現在)
- 広報担当者様:広報部 安藤なな緒様
目次
システムの脆弱性からWeb社内報をリニューアル
――Web(アプリ)社内報導入のきっかけから教えてください。
安藤さん:もともと紙の社内報とWeb社内報を並行して発行していました。紙はグループ全社員に知っていてほしい情報が載っている教科書的なもの。Webは即時性のある内容を載せるもの、といったすみ分けもできていました。ところがWeb社内報に使用していたシステムに脆弱性が指摘され、他のツールに切り替える必要が出てきました。
また、紙の社内報もペーパーレス化を検討していく話が上がっていたタイミングでした。試験的に、冊子をPDF のみで発行してアンケートを取り、慎重に社内の意見を聞きながら方針を探りました。結果、紙は年4回発行から不定期発行に切り替えることに。そうした社内広報全体のデジタル化も見据えながらのWeb社内報リニューアルでした。
――ツール選びで重視した要素はありますか?
安藤さん:正直、検討を始めた時点では弊社に必要なものが何なのか整理しきれておらず、Web社内報ツールの種類もすごく増えていたので、各社さんの説明を聞きながら洗い出していきました。
ツールには大きく分けてSNS型とメディア型がありましたが、弊社にはすでに社内向けポータルサイトもあり、SNS型の社内報サービスが持つ掲示板機能的なものは不要だったので、メディア型のほうが当社にマッチすると気づきました。また、セキュリティ面と利便性からも、シングルサインオンでログインできることが必須条件の一つと考えました。
――「社内報アプリ」に決めた理由はなんでしょう。
安藤さん:まずは必須条件であるシングルサインオンが可能だったこと。あわせて書式のテンプレートがたくさんあったことです。それとサポート体制もよかったんですよね。例えば記事を更新する管理画面は、基本的にはフィーリングで操作できましたが、表を作成したいときにはどうやったらいいんだろう、このレイアウトはどうしたらできるんだろう、といったちょっとしたことも、聞けば丁寧に教えてくれました。
定期ミーティングもあって、他社事例などもたくさん教えていただきましたし、私たちと一緒に伴走してくれたところは、社内でも「よかったね」と話しています。
「デザイン設定」機能も駆使して見た目からこだわるように
――オープンに向けて苦労したところは?
安藤さん:もともとリニューアルをするからには、垢抜けたサイトを目指して見た目にもこだわろう!という目標を掲げていました。
他社のWeb社内報は非公開のものが多いので、企業の「note」やさまざまなWEB媒体などを参考にしながら、記事のサムネイルのデザインの研究や、フォントや色の勉強をしました。
サムネイルは自分自身で作成する必要がありますが、社内報アプリでは「デザイン設定」でサイト全体の色味の設定が細かくできたので、カテゴリごとに色のトーンに違和感がないように、記事を邪魔しないように、といろいろと試しながら調整していきました。
操作性でいえば以前よりも使いやすく、画像や動画も載せられるようになって、レイアウトもしやすくなりました。
――現在、どのような編集体制やルールで運用されていますか?
安藤さん:社内報のメイン担当は私1人で、ほかの業務と兼務しながら運営しています。広報部メンバーは6人で、他のメンバーも常にサポートしてくれています。また、全国の拠点に40人以上通信員がいて、通信員には執筆までお任せするケースもあれば、情報を提供してもらい私がまとめるケースもあります。そのほか、経営陣インタビューなどの特集記事は外部ライターに依頼しています。
――社内報のメイン担当として、他のメンバーを巻き込みながら運営する中で感じることやコツを教えてください。
安藤さん:「こんな特集を組みたい」というと、広報部メンバーはすぐに意見やアイディアを出してくれますし、案件に関連する部署に相談すればすぐにアドバイスももらえます。最近は「こんなことを周知したい」と他部署から相談してもらえることが増え、うれしく感じています。このように社内の各部署とも常に連携しながら運営しています。
またコツというほどではありませんが、通信員や協力してくださった方に対しては、「ありがとう」と必ず伝えるようにしています。皆さん、本業がある中で時間をつくってくださっているわけですから、快く協力していただけることに本当に感謝しています。
あとは、登場いただく部署が偏らないよう、しばらく登場していない部署には、ネタの提供をさりげなくプッシュします。でも、ありがたいことにちょうど良いタイミングで「こんなネタどう?」と話をいただくんですよ。社内で世間話をしている延長に情報があるという感じです。
効果測定を活用して、PDCAが回しやすく
――社内報アプリの効果測定は役にたっていますか?
安藤さん:読者の反応が簡単に見られるようになったことには、すごく恩恵を感じています。管理画面のトップページにUU数やビューランキングなどが表示されるので、肌感覚で「これが読まれているな」とチェックできますし、毎月振り返りもしています。PDCAが回しやすくなりました。
初期の段階では、ウィズワークスから「こうするともっと伸びますよ」とデータを元にアドバイスいただけたこともよかったです。慣れてきてからは、記事の反応が気になったタイミングでデータを確認しながら「思ったとおりよかった」「あれ、いまいちだったか」「おや、時間を置いて伸びてきた」など検証をし、次の記事作りに生かしています。
とはいえ、私たちは閲覧率を目標にはしていません。それでも、グループ社員との日ごろの会話の中でも社内報アプリに掲載した記事が話題に上がることが多いので、「これは読んでくれているな」と実感しています。
スペース制限がないからこそ、紙ではできなかった企画が実現
――社員の皆さんの反応はいかがですか?好評な企画も教えてください。
安藤さん:アカウントを持っている社員は、会社のPCでも会社スマホからでも全部の記事が見られます。あとはご家族用に別のアカウントを発行し、一部制限を掛けていますが、個人スマホでも見られるようにしています。
そうした中でよく聞くのは「サムネイルが分かりやすい!」ということ。実際、サムネイルが好評だと読まれる率も高いです。また、企画の登場者に後日アンケートを取ってみたところ、「記事内で使われていた画像が印象的と言われた」など、画像に対するコメントを多くいただきました。やはり画像は大事なんだな、と再認識しました。
また、この1年で一番読まれたのは、新入社員の紹介記事です。もともと紙の社内報に掲載していた恒例企画でしたが、Web社内報のリニューアルの目玉企画にしようと考えていたため、特注のデザインをウィズワークスにお願いして作っていただきました。
「THE LEADER‘S VOICE」という記事も人気です。ここでは、プロジェクトやチームのリーダーを中心に、文字制限を気にすることなく、思う存分苦労話などを語っていただいています。今回のリニューアルを機に絶対に実現させたいと思っていた企画でした。
というのも、紙の社内報の場合はスペースが限られているので、かなり大きなプロジェクトでないと特集が組めません。しかし、規模に関係なく活躍している社員はたくさんいます。そうした人にもっとスポットを当てたいと考えていました。
読者からは「面白い」「知らなかった」「次も楽しみにしている」など、うれしい声がたくさん届いています。登場してくださった方も照れくさそうにはしながらも、取材に応じてくださいます。こんなふうに限られた人しか知らなかった社員の活躍を紹介できることが、社内報の醍醐味ですよね。
もう1つ、男性の育休取得者の座談会も好評でした。会社として取得を推進したいところだったので、人事部門と相談しながら企画を練りました。タイムリーな企画でしたし、座談会の取材自体も楽しく、社員同士でパパ友の輪が広がりました。
記事が公開されると反響も大きく、取得を考えている男性社員から、登場した人たちに対してたくさん質問が寄せられたそうです。会社全体で様々な取り組みを推進した結果、かなり前倒しで取得率の目標を達成できました。記事の登場者がリアルな本音で語ってくれたことも、取得しやすい空気づくりを後押しできたのではと思っています。
報道フロアのように即時性あるニュースも発信
――紙から切り替えてよかったことはありますか?
安藤さん:紙には紙の良さがあります。紙で読みたいという社員もたくさんいますから、弊社では不定期発行ではありますが、紙の社内報も継続します。その上でデジタルの良さを挙げるならば、やはり即時性と情報のスペース制限の無さです。
先日の株主総会では「無事に終わりました」と現場の社員から写真と報告が届き、数分後にはアプリ内で発信ができました。「まるで報道フロアみたいだね」とみんなで自画自賛していたのですが、本当にすごいなぁと思いました。
――課題や、今後やりたいことを教えてください。
安藤さん:運用もだいぶ慣れてきましたので、記事のコンテンツ作りのマニュアルを作りたいと思っています。
また、スタート時のものめずらしさが減ってもログイン率は減らないよう、皆さんが興味ありそうなニュースにアンテナを張って発信することで、継続して読んでもらえるように工夫をしていきます。
まずは要望として挙がっている「部署紹介コーナーを復活してほしい」という声に応えること。社内報アプリだからこそできる新たな要素も盛り込んで、パワーアップをして復活させたいと思っています。
目標は日常的に「あの記事読んだ?」と話題に上がるような社内報。今まで以上にそういった存在になっていきたいです。
――ありがとうございました。