BPR(Business Process Re-engineering)とは、企業の組織や業務体系・構造などあらゆるものをゼロベースに戻し、再構築することを言います。手法自体は目新しいものではありませんが、働き方改革が進む中、再び注目を集めています。
現状を打破して、企業としてより目覚ましい発展を目指すなら、まずは自社の業務体系や組織体系について今一度見直してみましょう。
本記事では、BPRの意味や定義、混同されがちな「業務改善」との違いを紹介します。メリット・デメリットやBPR導入のポイントも紹介するので、併せて確認してください。
BPRとは
旧態依然の分業組織・業務体系を維持していては、デジタル化・グローバル化の波に乗りきれません。現状、業務が非効率化していたり生産性の向上が見られない企業にこそ必要なのが、「BPR」です。
ここからは、BPRの意味や定義、混同されがちな「業務改善」との違いを紹介します。
企業の業務・構造・組織・戦略を再構築すること
BPRとは、「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)」の略称です。企業の組織・業務改革の手法の一つで、業務・構造・組織・戦略などあらゆることをゼロベースに戻して再構築することを言います。
現在のビジネス業界においては既知の手法ですが、世間に注目されるようになったのは1993年ごろです。マイケル・ハマー&ジェイムズ・チャンピーが「リエンジニアリング革命」という著書の中で示したリエンジニアリングの定義が、BPRの基本概念として広く受け入れられるようになりました。
BPRの定義
平成22年3月に「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」が発表した「民間企業等における効率化方策等(業務改革「BPR」)の国の行政組織への導入に関する調査研究報告書概要版」では、BPRの定義について、マイケル・ハマー&ジェイムズ・チャンピーの著書『リエンジニアリング革命』の中で以下のようにまとめています。
”コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと”
[引用]三菱UFJリサーチ&コンサルティング「民間企業等における効率化方策等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究報告書概要版」
つまりBPRとは、企業組織のあり方・業務の遂行方法そのものに影響を与える大改革と言い換えられます。すなわち「根本的」、「抜本的」、「劇的」であることが必要で、「どこが変わったのか分からないような改変」ではBPRとは呼べないのです。
BPRの目的
BPRの主たる目的は、企業組織を抜本的に変えることで生産性を向上させ、業務の効率化を図ることです。
近年の市場の著しいグローバル化・IT化は、日本的な古い組織体系と相性がよくありません。ムダを省いて業務を効率化・スピードアップしていくことは、変化の激しい時代には必須です。
例えば、部門・部署の統廃合や情報システム・ITツールの導入、アウトソーシングの活用などは、多くの企業ですでに行われ始めています。少子高齢化が進む日本では、将来的に生産年齢人口が低下し、労働力の確保が難しくなると予想されています。企業はなるべく早急に現体制を見直して、将来に備えておく必要があるでしょう。
業務改善との違い
BPRは業務改善としばしば混同されがちですが、両者は全くの別のものです。
業務改善は、あくまで「業務の見直し」に過ぎません。業務体系や業務フローが大幅に変わることはなく、変更箇所はごく小さなものです。一方BPRは、範囲を限定しません。業務体系・業務フローが一変するほどの大きな改革です。
以下に、BPRと業務改善の主な違いをまとめました。
|
BPR |
業務改善 |
---|---|---|
対象 |
組織全体 |
一部の業務 |
実施に必要な期間 |
1~数年 |
数カ月 |
目的 |
組織の抜本的な改革 |
業務効率アップ |
影響が及ぶ範囲 |
全社から取引先 |
一部から全社 |
業務改善は、業務フローや社員の効率を重視して行われるものです。これに対し、BPRは市場の方を向いた改革であり、組織の根幹にさえ影響を与えます。規模・影響の大きさは、業務改善よりもBPRの方が圧倒的に大きいと言えるでしょう。
BPRを推進する3つのメリット
市場の変化や政府主導の働き方改革により、大手企業をはじめとしてさまざまな企業がBPRに取り組んでいます。BPRを行うことで企業は業務効率化・企業価値向上などのメリットがあると言われます。
具体的にご紹介します。
1. 業務のどこにムダがあるのか把握しやすくなる
BPRという全社的なプロジェクトには、企業に関わる全ての業務について可視化するプロセスが含まれます。あらゆる部門・部署の業務フローや体系を一から洗い出せば、「どの業務がムダなのか」「統合できるとすればどこか」などが見えてくるでしょう。
ムダな工程・必要性が曖昧な工程が分かれば、部門・部署ごとの業務効率化のプロセスも立てやすくなります。ITツールを導入すべきところ・アウトソーシングを活用すべきところ・自社でまかなうべきところなど、必要なポイントが明確になって、実務のスリム化を実現できるでしょう。
2. 社員の働きやすさが向上する
ムダな業務が多いということは、社員がムダな工程に手を取られているということです。BPRによって業務の見直しが進めば、社員は不要な業務に時間をかける必要がありません。社員は不満を感じることなく働けるようになり、従業員満足度の向上が期待できるでしょう。
特に、歴史ある企業ほど、現代にそぐわない慣習やしきたりを持つケースが少なくありません。BPRでそれらを一掃できれば、社員の働きやすさは格段に上がるはずです。
3. 企業価値向上につながる
業務体系が変わって従業員の労働意欲が向上すれば、企業が提供する商品・サービスのクオリティーにも反映されます。生産性・品質ともに向上し、結果的に市場の反応が良くなったり顧客満足度が高くなったりといった手応えを得やすくなるでしょう。市場に良質な製品・サービスを送り出せば、市場における企業の存在感は高まり、企業価値も自然に向上します。
BPRを進める5つの手順
先述した「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」が発表した「民間企業等における効率化方策等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究報告書概要版」では、BPRを進める手順を「検討→分析→設計→モニタリング・評価」の5つのステップを紹介しています。[注1]
それらを参考に、BPRを進める手順を紹介します。
1. 検討
このフェーズでは「目的・目標の設定」「対象とする業務範囲の決定」を行います。まずは各部門に問題点等をあげてもらい、企業としてどのような点を改善してくべきか検討しましょう。さまざまな部門・部署からの意見を統合し、企業としてどのような目的・目標を定めるべきか決定してください。
次に、具体的に変える必要のある業務や範囲・単位を設定します。ここを曖昧にしてしまうと、組織改革が破綻しかねません。なるべく細かく・明確に基準を設けることが必要です。
2. 分析
このフェーズでは、企業が抱える課題の分析に努めます。まずは各部門の業務フローやルールを可視化して、適切に現状を把握しましょう。
このとき注目したいのが、「時間がかかり過ぎている工程」「重複している工程」「利益に貢献していない工程」などです。
なお、課題をより効率的に見つけ出すなら分析フレームワークなどを利用するのが良いでしょう。例えば、目標達成のフレームワーク「OKR」、業績評価手法「バランススコアカード」の導入などがお薦めです。
3. 設計
分析フェーズの次は、具体的な戦略・目標を立てるフェーズです。現状把握によって得られた課題をどのように解決していくべきか、具体的に決定します。
企業戦略に沿わない業務工程は省いたり統合したりして、業務フロー・ルール・組織の最適化を行いましょう。逐次社員との意思確認・現状認識にずれがないかのチェックが必須です。
4. 実施
決定した戦略・目標実現を目指すフェーズです。BPRは全社的な取り組みとなるため、トップダウンで号令をかけることが必要となります。
ただし、やみくもに変化を求めても、社内が混乱するだけです。「全社的に取り組むこと」「各部門・部署で取り組むこと」を明確化し、短期目標を立てながらクリアしていきましょう。
5. モニタリング・評価
BPRの実施中は、都度効果測定と評価を行い、適宜修正を重ねていくことが必要です。全体の進捗状況とともに各部署・部門でのデータもチェックし、BPRの達成度を測りましょう。
[注1]三菱UFJリサーチ&コンサルティング「民間企業等における効率化方策等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究報告書概要版」
BPR推進時のポイントとは?
BPRは企業の根幹に関わる大規模な改革です。実施に当たっては緻密な計画と工程管理が必須となります。BPRは一朝一夕で終了するものではないからこそ、慎重に取り組んでいかなければなりません。
BPRを推進していくときのポイントを紹介します。
1. 最終ゴールを全社で共有する
BPRの目的・ゴールが曖昧だと、推進力が低下します。社員一人ひとりが「どこに向かっていくべきか」が分かるよう、短期目標・長期目標を分けてきちんと設定・共有しましょう。
BPRの目指すところがはっきりしていれば、問題を見つけたり評価を測定したりすることが容易です。全社的に同じゴールを目指せるよう、企業は社員に向けて必要な情報・問題を適宜開示していくべきです。
2. スモールスタートから範囲を広げる
BPRは全社的な改革ですが、現状がうまくいっている部門からは反発を受ける可能性があります。改革は全社一斉に導入するのではなく、一部門から徐々に拡大させていくのが良いでしょう。
例えばITツールを導入するときは、一部門・部署からスタートし、効果検証を行います。実際の達成率を数値で示せば、他の部門・部署の反発は少なくて済むはずです。徐々に導入対象を広げていきましょう。
3. 継続的な改革として取り組む
BPRのゴールを設けることは必要ですが、実際のところ到達までの道のりは単純ではありません。ITツールを導入後もしばらくは効果検証・修正を繰り返すこととなるため、BPRを短期的な視野で見るのは避けましょう。
BPRを推進中も、市場の状況は目まぐるしく変わっていきます。当初の目的・ゴールが市場の現状とそぐわなかったり手法に疑問が感じられたりしたときは、最適化したり別の方法を模索したりすることが必要です。
BPRを導入して業務効率化・生産性向上を目指そう
組織のスリム化・効率化を図る上で、BPRは欠かせません。企業利益にならないムダを徹底的に省き、コストダウン・利益アップにつなげましょう。
効果的にBPRを進めていくためには、「適切な現状把握」「目標の設定」、さらには「社員が共通の意識・認識を持つこと」が必要です。特に現場を担う社員がBPRを理解しておくことは重要で、改革の進捗スピードに大きく影響するでしょう。
現状、社員の帰属意識や横のつながりが希薄だと感じている企業は、社内コミュニケーションを活性化させる「社内報」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ウィズワークス株式会社の「社内報アプリ」は、社員参加型の総合情報ポータルです。各種社内資料、動画などの必要な情報を集約・共有しやすく、社員の帰属意識を育てます。BPRにおける重要な情報共有ツールとして、ぜひご検討ください。資料請求ページからお問い合わせいただければ、貴社に最適なプランのご提案から導入サポートまで一気貫通で行います。