少子高齢化に伴い、生産年齢人口が年々減少している現代日本では、1人あたりの労働生産力を高めるために、従業員にとって働きやすい環境づくりが求められています。
目指す形は企業によって異なりますが、理想的なモデルとしてよく取り上げられるのが「風通しの良い職場」です。ただ、言葉がやや抽象的なので、「風通しの良い職場とは具体的にどんな職場なのか」「職場の風通しを良くするとどんなメリットがあるのか」といった素朴な疑問を抱く人も少なくありません。
そこで今回は、風通しの良い職場の定義や、職場の風通しを良くするメリット、風通しのいい職場づくりの方法やポイントについて解説します。
目次
風通しの良い職場とは、情報・感情・知恵がスムーズに流れる職場のこと
「風通しの良い職場」の「風」とは、社内に流れる情報・感情・知恵などを意味します。複数の人が働く場所では、必ず情報や感情、知恵が生まれますが、これらの要素が従業員の間で共有されず、ひとつの場所に留まってしまうと、企業としての成長や発展を著しく妨げる要因になります。
逆に、社内で情報・感情・知恵がスムーズに行き来する職場なら、組織としての一体感や新しいアイデア、チームワークなどが生まれやすく、従業員一人ひとりが生き生きと働く理想の環境を作り出すことができるのです。
では、具体的にどのような職場であれば、情報・感情・知恵が流れやすくなるのでしょうか。ここでは、風通しの良い職場の定義を4つに分けて解説します。
1.社内コミュニケーションが活発な職場
従業員一人ひとりが持つ情報や感情、知恵がスムーズに発信されるためには、従業員間で活発にコミュニケーションを取る必要があります。
特定の部門・部署の人間としか接する機会がなく、どこにどのような人材がいるのか分からないといった環境では、情報や知恵が一つの箇所に滞りやすく、風通しの悪い職場になってしまいます。
部門や部署といった垣根を越えて、活発なコミュニケーションを取れる環境ならば、情報共有や業務の引継ぎもスムーズに進みやすく、業務効率の向上につながります。
2.誰もが意見を言いやすい職場
上司や先輩の顔色をうかがって、言いたいことも言えないような環境では、情報がスマートに共有されず、新しいアイデアも生まれません。また、従業員の心にも大きな負担がかかり、モチベーションの低下や離職につながる可能性が高くなります。
もちろん、組織においてルールやマナーを守るための規律は必要ですが、年齢や階級が過剰な壁にならず、全ての従業員が必要に応じて自分の意見や主張を行える環境を整えることが大切です。
3.意見を言える手段・機会を設けている職場
新しいアイデアを思いついたり、現在の業務について問題や課題が見つかったりしても、そのアイデアや意見を主張できる手段・機会がなければ、なかなか情報を発信することができません。
必要なときに気軽に意見・アイデアを出し合える手段や場所を設けていれば、個人だけで抱え込むことなく、情報や感情、知恵を積極的に発信できるようになります。
4.悪しき慣例・ルールがない職場
本来、職場の規律やマナーとは、組織の秩序を守り、労使間の余計なトラブルを防ぐことを目的としたものです。
しかし、実際には本来の目的とは関係のない「暗黙の了解」が横行している職場もめずらしくなく、たとえば「上司・先輩が退社するまでは帰ってはいけない」「新入社員は始業30分前までに出社し、社内の整理整頓をしなければならない」といったローカル・ルールに振り回されている人もいます。
このような悪しき慣例は、従業員の心身に負担をかけ、職場の雰囲気を悪化させる要因となります。最低限守るべきルールは就業規則に記載し、従業員の負担になるような慣例・ルールを作らないことが大切です。
風通しの良い職場にするメリット
風通しの良い職場づくりを心掛けると、以下のようなメリットがあります。
1.従業員のモチベーションの向上
自分の意見や主張、アイデアが通りやすい環境で働くと、モチベーションがアップし、仕事へのやりがいを感じるようになります。
仕事に対する意欲が高くなると、業務への取り組みも積極的になり、1人あたりの労働生産性の向上につながるでしょう。
また、従業員のモチベーションを維持できれば離職率も低下し、人材不足の問題解決にも役立ちます。
2.業務効率がアップする
どんな仕事でも、最初から最後まで一人でこなすのは難しく、他の従業員に報告・連絡・相談しながら、協力して仕事をこなしたり、業務を引き継いだりする必要があります。
職場の風通しが良いと、部門や部署に関係なく、全ての社員とコミュニケーションを取りやすい環境が整っているため、必要なときにすばやく情報を共有することができます。
また、経営部の意思決定が必要なシーンでも、滞りなくプロセスが進んでいくため、大事なビジネスチャンスを逃さずに済むところも大きなメリットです。
3.トラブルを未然に防げる
仕事中、判断に迷うことがあったら、上司や先輩に相談したり、周囲からアドバイスを受けたりするのが基本です。
しかし、周囲へ気軽に相談できないような職場の場合、「今相談したら迷惑かも」「いちいち相談するなと怒られるかもしれない」などと気持ちが萎縮してしまいがちです。
結局誰にも相談せずに自己判断で仕事を進めた結果、トラブルが発生・拡大し、会社に損害を与える原因になることもあります。風通しの良い職場であれば、仕事を行う上で大切な「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」が円滑に進むため、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。
4.新しいアイデアが生まれやすい
ビジネスは時代と共に変化していきますので、常に新しいアイデアを生み出し、形にしていくことが求められます。
従来は、特定の部署・部門・チームのメンバー間で意見やアイデアを出し合うのが通例でしたが、いつも同じ顔ぶれで話し合っていると、発想に偏りが出てしまいがちです。
役職や所属にとらわれない風通しの良い職場なら、部門や部署といった垣根を越えて、さまざまな人から意見やアイデアが集まるので、業績アップや企業としての発展・成長への効果が期待できます。
風通しの良い職場づくりの方法
風通しの良い職場を作るための方法はいくつかありますが、ここでは参考までに、代表的な事例を4つご紹介します。
1.1on1ミーティングの実施
1on1ミーティングとは、アメリカのシリコンバレー企業が取り入れ始めたマネジメント手法の一つで、上司と部下が1対1で対話することです。
企業では、部門や部署ごとに管理職が置かれていますが、所属するメンバーに対して人数が少ないため、部下一人ひとりに目を配るのは困難です。一方、部下の方も話したいことや相談したいことがあっても、「わざわざ時間を取ってもらうのは気が引ける」と、なかなか打ち明けられない場合があります。
業務の一環として1on1ミーティングを実施すれば、上司は一人ひとりの部下の様子を定期的にチェックできますし、部下は普段自分が思っていること、感じていることを打ち明けるいいチャンスになります。
1on1ミーティングのペースは企業によって異なりますが、最低でも月に1回の割合で実行するのが理想です。
2.フリーアドレスを導入する
フリーアドレスとは、従業員に固定の席を設けず、好きな席で自由に仕事をしてもらう制度のことです。
毎日同じ席で仕事をしていると、周辺にいる同じ顔ぶれの人としかコミュニケーションを取れなくなり、社内の風通しが悪くなってしまいます。フリーアドレスを導入すれば、その日によって周囲の顔ぶれが変わるので、普段は接する機会のない人との間に新たなコミュニケーションを築きやすくなります。
3.リラクゼーションスペースを設ける
勤務中は、従業員全員が目の前の仕事に没頭しているため、お互いなかなか声を掛けづらいものです。
オフィスの一画にリラクゼーションスペースを設けておけば、休憩したい人だけが集まってくるので、「忙しいかな」「話しかけたら迷惑かも」といった心配をせずに、気軽に会話することができます。
4.コミュニケーションツールを導入する
近年は、インターネットを利用して簡単にコミュニケーションを取れるツールがたくさん流通しています。
例えばWeb会議システムなら、インターネット環境とPCやスマホ、タブレットなどのデジタル端末があれば、いつでもどこでも離れた場所にいる相手と映像でコミュニケーションを取ることができるでしょう。
また、Webやアプリ上で簡単にコミュニケーションを取ったり、会社の最新情報を閲覧したりできる社内報を利用すれば、部署や部門の垣根を越えて情報共有や関係構築を実現できます。
コミュニケーションツールにはいろいろな種類がありますので、自社のニーズや目的に合ったものを選んで導入してみましょう。
風通しの良い職場づくりのポイント
風通しの良い職場づくりに取り組む際、押さえておきたいポイントを2つご紹介します。
1.従業員の意見を反映させる
ここまで、風通しの良い職場の作り方の事例をいくつかご紹介しましたが、あくまで一例であり、導入したからといって必ずしも良い効果が生まれるとは限りません。本当に風通しの良い職場を作るためには、現在の職場の雰囲気や状況にふさわしい施策を選んで実施することが大切です。
現場に合わない施策を行うと、従業員から反感を買うなど逆効果になってしまうことがあるので、あらかじめ注意が必要です。具体的な対策としては、事前に従業員を対象としたアンケートを実施し、職場づくりについての意見を尋ねてみるのがおすすめです。
もちろん、すべての意見を汲むことはできませんが、一人ひとりの希望や要望に目を通せば、どんな職場を望んでいるのか、どのようなことに不満を持っているのか判断する材料になるでしょう。
2.実現・継続可能な施策かどうか確認する
風通しの良い職場づくりには、それなりのコストや時間、手間がかかります。理想の職場づくりは一朝一夕で完結するものではなく、試行錯誤を繰り返しながら、必要に応じて見直しやブラッシュアップが必要になります。
一回きりや、短期間のみ実施する施策では、風通しの良い職場を維持することはできませんので、コストや労力などを踏まえ、実現かつ継続可能な施策かどうかも慎重に検討しましょう。
風通しの良い職場づくりは、企業にも従業員にもメリットがいっぱい
従業員間で情報・感情・知恵がスムーズに流れる風通しの良い職場は、モチベーションアップや離職率の低下、業績アップなど、さまざまなメリットがあります。
社内コミュニケーションの活性化や、誰もが意見を言いやすい環境づくりなどに取り組み、職場の風通しを良くすることを目指しましょう。
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社内情報を従業員同士で共有すれば、共通の話題からコミュニケーションを活性化させることもできますので、風通しの良い職場づくりの施策のひとつとしてぜひご利用ください。機能や利用方法など、詳しい内容は「資料請求」ページからお気軽にお問い合わせください。