世界中の人々の「美しくなりたい」という思いに応える商品やサービスを提供し続ける、ワコールグループ。インターナルコミュニケーション分野でも高い評価を受ける同社も、コロナ禍で双方向コミュニケーションの重要性を痛感し、2021年4月、社内報アプリを導入しました。社内報アプリならではのカジュアルでタイムリーな企画に工夫を凝らし、外勤・内勤社員の帰属意識向上に取り組んでいます。株式会社ワコールホールディングス コーポレートコミュニケーション部の谷垣裕子さんにお話を伺いました。
【導入目的】
- 経営陣と従業員、従業員同士の双方向コミュニケーションツールとする
- コロナ禍で勤務状況が変化する中、特に外勤社員(店頭販売員)とのコミュニケーション不足を解消する
- 企業理念を軸に、主に店頭販売員の帰属意識を高める
【課題】
- コロナ禍で勤務できない店頭販売員への情報伝達が困難に
- リアルなコミュニケーションが減少し、グループへの帰属意識、一体感醸成に影響も
- 内勤社員も在宅勤務が進み、コミュニケーションや好事例の共有が難しくなった
- 既存のWeb社内報は情報発信が一方通行で、閲覧しやすさの改善が必要だった
【効果】
- テンプレートを活用し、写真や動画も使ったカジュアルな情報発信が可能
- 手軽に閲覧&投稿できることから、「情報を載せたい」との声が集まるように
- 現場発信の成功事例の紹介記事で、従業員のモチベーションがアップ
- 効果測定で閲覧される要因、閲覧されにくい要因を追求し、進化させていける
■株式会社ワコールホールディングス
- 事業内容:インナーウェア、アウターウェア、スポーツウェア、その他の繊維製品および関連製品の製造、卸売販売および一部製品の消費者への直接販売など
- 従業員数:連結20,316人(2021年3月末時点。うち社内報アプリのユーザーは約7,400人)
- 広報担当者様:コーポレートコミュニケーション部 広報担当 谷垣裕子様
目次
対面の機会減少で主に販売員の帰属意識が低下。双方向コミュニケーションツール導入を急ぐ
―― 以前からインターナルコミュニケーションツールとして、紙とWebの社内報などを活用されていました。既存のWeb社内報から弊社「社内報アプリ」に切り替えた背景から聞かせてください。
谷垣さん:コロナ禍の緊急事態宣言で、特に(株)ワコールの約7割を占める外勤社員(店頭販売員)に、情報が行き渡りにくくなっていたことも理由の一つです。
以前のWeb社内報も、販売員をターゲットにスマートフォンで見られるようにしていたのですが、ブラウザからの閲覧でプッシュ通知はありませんでした。さらにIDとパスワードの都度入力が必要で、そのパスワードも定期的に変更しなくてならないことが課題になっていました。
結果、情報は一方通行となり、成功事例など部門を超えた情報共有が不足。それが従業員のモチベーションや、グループへの帰属意識にも影響を及ぼしているのではないかと感じていました。
そこにきてコロナ禍です。販売員は自宅待機になったり、営業も現場に足を運べなくなったりと、リアルなコミュニケーションが減少しました。現場の不安が募る中、しっかりと情報を届けられるツールの整備が急務でした。
―― ツール検討の際、重視されていたポイント、そして、「社内報アプリ」に決めた理由を教えてください。
谷垣さん: 弊社の社内広報の目的は下記3つです。
- ワコールの持続的な成長を実現するために、会社グループ全体の一体感を醸成する
- 経営理念を軸とした行動を従業員に促す
- 経営陣と従業員、従業員同士のコミュニケーションの活性化を図る
双方向のコミュニケーションの活性化を図るならば、コメントやいいね機能は重要ですし、プッシュ通知で記事の閲覧を促したいと考えていました。「社内報アプリ」はこれらの機能が備わっていますし、社内報専門会社であるウィズワークスさんが手掛けているので、他社の社内報担当者の「これが欲しい!」が全て詰まっているだろうという信頼感がありました。私たちの「販売員が気軽に見やすいツールを作りたい」という目標にも応えてもらえるかもしれないという期待を含め、導入を決めました。
紙社内報と社内報アプリの役割・ターゲットを明確化。アプリはコミュニケーションを重視
―― 導入にあたって意識したことや、苦労したことはありますか?
谷垣さん:まず、社内広報の全体設計を見直しました。一部で「紙の社内報を廃止しては?」との声もあがりましたが、紙には紙の良さがあります。紙とアプリの役割を明確にして、従業員アンケートの結果も踏まえてそれぞれの必要性を説明し、役員会議でアプリの導入を承認してもらいました。
紙の社内報は一人ひとりの手元に届いて、しっかり目を通してもらえますし、後から振り返ることもできます。経営方針など、会社としてじっくりと考えてほしいテーマを掘り下げて、分かりやすく伝える役割を担うものとしました。発行頻度は年6回でしたが、社内報アプリ導入後は年4回に変更しています。ターゲットは主にマネジメント層などです。
社内報アプリは、双方向のコミュニケーションが取れる媒体として、従業員のタテ・ヨコ・ナナメの関係を築くことを主な役割としています。現在は従業員紹介、店頭や各部門の好事例紹介などのコンテンツを、タイムリーに週2回発信。外勤社員を主なターゲットとしています。
―― 企画はどのようにして考えているのでしょうか?
谷垣さん:年1回の定期的なアンケートに加えて、コロナ禍にもアンケートを実施したのですが、その時に「今、知りたいことはなんですか?」ということを聞きました。その結果もコンテンツ作りに生かしています。
例えば「経営陣が考えていることをもっと知りたい」という要望に対しては、「トップメッセージ」のコンテンツで「役員講話」を動画とともに掲載しています。いつでもどこでも見られるアプリに載せることで、経営に対する敷居を低くすることができたのでは、と思っています。
他にも、難しくなりやすい業績情報(国内・海外の月次売上報告)は、レイアウトを工夫して分かりやすく発信しています。ポジティブな事項をオレンジ文字、苦戦している事項を青文字にして、色付きの文字を追っていくだけで会社の業績状況が分かるように工夫しました。
―― 社内報アプリに対する従業員の反応はいかがですか。
谷垣さん:従業員の仕事に掛ける思いや、プライベートの一面を伝える企画は特に人気です。紙社内報の時も従業員紹介は人気企画でしたが、アプリでは、動画とともに楽しい雰囲気でその従業員の人柄も伝わるような構成で掲載しており、第一回目から従業員同士でも話題になり、人気企画の一つになっています。
他にも、「定期的に情報を配信したい」という新規事業部門にも、連載コラムを一つお任せしています。これは、社長が新規事業部門に「情報発信なら社内報アプリを活用したらどうか」と、こちらにつないでくれたのがきっかけとなりました。社長自身が、アプリを推奨してくださっていることは非常に心強いです。
私自身も、社内で常にアンテナを張り、情報を探り、「その情報、アプリに載せませんか?」との声掛けをしており、「会社をもっとよくしたい」という若手の有志団体メンバーにも、積極的にアプリを活用してもらっています。そういう前向きな活動をどんどん取り上げて、みんなの目に見えるようにしていきたいです。
また、「こういう取り組みをしたら売上が伸びました」といった、店舗のノウハウ共有記事には、コメントも複数寄せられました。これは営業担当から掲載依頼を受けた企画で、「社内報アプリに掲載することで、販売員のモチベーションにつながるのなら」との思いで掲載しました。
アプリをスタートさせてすぐに、店頭の販売員からうれしい声が届きました。「社内報アプリで自分が働いているグループの情報を共有できたり、つながれていることが感じられて、ワクワクしています。コロナ禍で、販売員が会社に行くことも、営業が店頭に足を運ぶことも少なくなりましたが、こうしたアプリが従業員をつなぐことで、より大きな力になることを願っています」とのメールをいただいたのです。まさに、私たちがやろうとしていることが読者に伝わっているんだと感じました。
作り手にも読み手にもちょうどいいカジュアル感で、情報が集まる場に
―― 導入の効果として、現時点で感じていることを教えてください。
谷垣さん:社内報アプリでは、テンプレートを使いながら、ブログを書くように、ライトな雰囲気の記事を作るようにしています。それを見て、「こういう記事も社内報に載せていいんだ」と思ってもらえたのか、グループ会社からも掲載依頼が来るようになりました。情報が行き渡りやすくなったのと同時に、情報が集まりやすくなったと感じています。
―― 効果測定のデータも踏まえて見えてきた課題や、今後、取り組みたいことを教えてください。
谷垣さん: 社内報アプリでは、誰がどういう時間帯に、どういう内容を見ているのかをログで確認することができます。例えば「プッシュ通知のタイミングで最もアクセスが増えやすい(それ以外の時間はなかなか見られない)」といったことも分かります。そうした情報を分析し、更新のタイミングなどを改善していきたいと思っています。
社内報アプリのダウンロード数も上げていきたいです。外勤社員は会社支給のスマートフォンはないので、個人のスマホに入れて見てくれている人も多いようです。直近では外勤者に1人1台、社内報アプリをインストール済みのタブレットを随時支給していますが、アプリの存在に気付いていない人もいるため、紙社内報の裏表紙で、改めて「このアイコンが社内報アプリです。見てください!」と告知をし、閲覧率をあげていくように心掛けています。
アンケートでは「会社のツールなので、コメントを書くのは難しい」との意見もあり、コメント機能の活用はまだ道半ばです。双方向コミュニケーションの活性化にも取り組んでいきたいので、ぜひ同じ課題を抱える企業の方々とも情報共有をしながら、解決策を探っていきたいです。
―― ありがとうございました。