種子・苗木・球根・農園芸用品の生産・販売で、世界の農園芸をけん引する株式会社サカタのタネ。170カ国以上で事業を展開する、国際性豊かな会社です。
2021年5月にグローバル社内報をWeb化したことで、国も文化も違う社員同士がコメントを投稿し合ったり、各国の活動がリアルタイムで共有されたりと、コミュニケーションの活性化を実現しました。グローバル報を担当するコーポレートコミュニケーション部の皆さんに、運営の裏側をお聞きしました。
【導入目的】
- グローバル社内報の運営を効率化し、世界に広がる各拠点の情報をタイムリーに発信する
- 閲覧状況を可視化する
【課題】
- PDF版のグローバル社内報は発行頻度(4回/年)が少ないため、1号の情報量が多くなりがちで、また、タイムリーな掲載が難しい
- どの海外拠点で誰が読んでいるか、把握できていない
【効果】
- タイムリーな情報発信が可能になった
- コメント投稿機能を使ったコミュニケーションが活性化した
- ビュー数や、どの国の人が閲覧しているか把握できる
- 記事の寄稿、投稿が増えた
- 情報のバリエーションが広がった
■株式会社サカタのタネ
- 事業内容:種子・苗木・球根・農園芸用品の生産および販売、育種・研究・委託採種技術指導など
- 従業員数:連結2,559人(2021年5月時点)
- 広報担当者様:コーポレートコミュニケーション部 清水俊英様、大無田龍一様、福田まゆ子様、藤田杏奈様、中野真由様
目次
情報が古くなりがちで、1回のボリュームが過多。従来のPDF社内報からの変革
――「社内報アプリ」導入前、どのような課題があったのでしょうか。
福田さん:弊社では2017年からPDFでグローバル社内報を発行していました。当時、日本国内の社内報はあったのですが、世界各拠点の取り組みを共有できるグローバルな社内報がなかったため、「まずはスモールスタートで始めよう」という形で始めたのです。9カ国、計18人(現在は11カ国、計20人)の社員に窓口になってもらい、その人たちを通じて拠点の情報を集めたり、完成したPDFを配布してもらったりしていました。
藤田さん:年4回の発行だったのでタイムリーな情報発信ができず、次の配信までの期間に寄せられるネタが増えていく課題もありました。1号で50ページ以上になることもあったのですが、地域によっては紙に出力して配布していたようで、「エコではない」という声もありました。
福田さん:特に課題だったのは、各国の窓口担当者から現場社員にPDFを共有してもらっていたため、誰にどこまで届けられているか、私たち編集部員が正確に把握できていないことでした。閲覧状況を確認でき、海外からでも閲覧、記事編集が可能なWeb社内報の導入を検討し始めました。
─―Web社内報の導入に向けて検討したことや、「社内報アプリ」に決めた理由を教えてください。
藤田さん:世界各拠点から投稿できるようにしたかったため、どの海外拠点でも問題なく投稿・閲覧できるかどうかが重要でした。コスト面についても、予算内でおさまるかどうかを検討しました。
最終的に社内報アプリに決めた理由は、海外対応が必要という弊社の状況に柔軟に対応していただいたからです。特に心に残ったのは、GDPR(EU一般データ保護規則)の対応のため、機能の調整が実現したことでした。
さらに、海外のユーザー(社員)情報の正確な把握が難しいという状況に応じて、運用方法を一緒に検討したり、各国の窓口担当者が閲覧・編集ができるか、複数回トライアルを実施したりと、私たちの「こうしたい」に親身に寄り添ってもらえた点は、大きな安心感につながりました。
タイムリーで多彩な投稿が届くコミュニケーションメディアへ
─― 社内報アプリを導入して実現できたこと、実感している効果を教えてください。
藤田さん:タイムリーな配信が可能になり、海外からの投稿を受けて1~2週間あれば確認して公開できるようになりました。そのおかげか、各国から積極的に記事を投稿してくれる機会が増えてきました。動画が配信できるようになったことも大きく、社長の動画メッセージは、私たち編集部にとってはキラーコンテンツです。
清水さん:情報がホットなうちに行き来するようになったことで、以前より見る人が増えたと思います。今は社長の動画メッセージが最もビュー数が多いです。世界に拠点が分かれているので、各地の社員は「今社長が何を考えているのか」を知りたいんですよね。
社長の動画だけでなく、その近辺でアップされた記事のビューも上がっていくのも、興味深く感じています。
中野さん:海外から積極的に投稿してくれるようになったことで、私たちと各国の窓口担当者とのコミュニケーションも増え、理解が深まりましたよね。PDFで発行していた時よりも、社内の人脈が広がっています。
藤田さん:PDFのころは、寄せられる情報の中心が「各拠点のイベント報告」でした。社内報アプリになってからは、インドからヨガのレクチャー動画が届くなど、記事の幅が広がりました。海外向けの花営業部からは、花のサイズを測れるメジャーの作り方を伝える記事が届き、業務のノウハウの共有になるような記事も増えています。
大無田さん:効果測定機能があり、どの記事がどれくらい読まれているのか数字で把握できるようになった点も、大きな変化です。記事を出す側としてはプレッシャーにもなりますが、どう改善していくか客観的に考えるためのヒントになっています。
趣味の写真投稿からリアルなつながりが!コメント機能も活用
―― 御社はコメント機能も活発に利用されていますね。
福田さん:そうなんです。社員からお気に入りの写真や趣味の写真を投稿してもらう企画があるのですが、そのコメント欄では写真を通じて同じ趣味を持つ人が集まり、楽しく会話を繰り広げています。写真の内容やコメントを通じて、社員の意外な一面が見えるのが面白いですね。
さらに、コメントのやり取りからから発展して「社内の昆虫好きで集まろう」という話も出ているそうで、うれしいなと思っています。社内報を通じて、新たに社員同士のコミュニケーションが生まれました。
―― コメントの管理はどのようにされているのですか?
藤田さん:今のところ自由にコメントいただき、即時に公開される形で運用しています。念のため、私たちコーポレートコミュニケーション部のメンバーが、コメントが投稿された時にチェックして、何かあれば迅速に対応できるようにしていますが、今のところ何も問題なく運用できています。
清水さん:ユーザー向けのガイドラインもきちんと策定して、サイト内で記事として公開しています。「自由なプラットフォームであり、自由活発な議論を期待していますが、ガイドラインに違反する恐れがある場合は…」という趣旨の内容を挙げて、運営側のスタンスを見せています。
他にも、記事ごとにコメント機能のオン・オフができるので、双方向コミュニケーションとは異なる趣旨の企画ではコメント機能をオフにするなど、使い分けて運用しています。
―― いろいろな機能をご活用いただきながら、社内報を育ててくださっているのをうれしく思います。最後に、今後の目標を教えてください。
清水さん:まだ始まったばかりなので、当分はやはり、Web社内報にアクセスできる従業員全員が、少なくとも一回はサイトを訪れて、面白い記事を見つけてファンになってもらえるような媒体にしたいです。
もちろん、社長メッセージも含めて会社としてオフィシャルな情報を発信する場としての位置づけも考えています。とはいえ、運営をしていく中で、Web社内報は「見ることを強要する媒体ではない」とも感じています。まずは、社内報を読むのが楽しくなり、再び自主的に見に来たくなってしまうようなサイトを目指していきたいですね。より多くの人に親しんでもらい、社内コミュニケーションの基盤になっていくことを期待しています。
―― ありがとうございました。