東急建設は東京都渋谷区に本社を置く東急グループの総合建設会社です。1946年に創業し、社員数は約2,600名で、国内全域や東南アジアで建物のインフラの構築を地域に密着して行っています。1969年に紙の社内報「建設」を創刊し、最近では「Magazine Q」として年4回の発行を続けてきました。
2023年1月からWeb社内報「Magazine Q+」をオープン。ウィズワークス主催の「社内報アワード」に初挑戦で見事グランプリを獲得した、経営戦略本部 コーポレート・コミュニケーション部の西田博貴さんと菅梨理子さんにお話を伺いました。
【導入目的】
- 長期経営計画”To zero, from zero.”において競争優位の源泉に位置づけている「人材」の強化に向けて、Web社内報をインナーブランディングのツールとして活用したい
- 国内外に点在する建設現場で、物理的にも心理的にも本社との距離を感じている若手社員たちの帰属意識やエンゲージメントを高めるために役立てたい
- 社員が見たい時に楽しく見られる社内報の実現のために、スマホなどでも気軽に閲覧できるようにしたい
【課題】
- 紙の社内報は発行回数が少ないため情報がタイムリーではなく、知っている社員が登場する頻度も少ないため関心ももたれにくい
- 文字情報では現場の状況が伝わりにくいため、写真や動画などを多用して視覚的に伝えられるようにしたい
- 堅苦しい内容では見てもらえないため、ポップで柔らかめのデザインを簡単に実現できるようにしたい
【効果】
- 自分たちの手でデザインして記事をアップできるため、企画内容やスケジュールに柔軟性が出てきた
- 企画ごとにUUやPV数が把握できるため、世代や職種ごとに関心がある内容を把握して、次の企画に生かせるようになった
- Web社内報の動画企画をYouTubeを通じて外部にも配信ができるようになり、会社を社外にアピールすることにも役立っている
■東急建設株式会社
- 事業内容:総合建設業
- 従業員数:2,628名(2023年3月31日現在) ※連結従業員数 3,041名
- 広報担当者様:経営戦略本部 コーポレート・コミュニケーション部 西田博貴様、菅梨理子様 ほか1名
Web社内報実現のために事前ヒアリングや綿密な準備を
――Web社内報を導入するきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
西田さん:検討を始めたきっかけは、長期経営計画“To zero, from zero.”の中で、5つの重点施策の一つに、「東急建設ブランドの確立」が掲げられていることです。ビジョンに共感する従業員を増やすことに寄与できるような、インナーブランディングのツールにしたいと考えました。
菅さん:とくに、会社のこれからを担う若手社員のモチベーションやエンゲージメントを高めたいという意図がありました。当社は全国各地に現場が点在していて、本社との距離感が物理的に遠いだけではなく、業務上関わる機会もほとんどないことから心理的にも遠いと感じている人もいます。そうした人たちにも、どうすれば見たいと思ってもらえるのかと議論しました。
その目的を達成するには、今の紙の社内報では発行回数だけでなく登場する社員の数などが少なく、関心を持ってもらいにくいと感じていたため、Web化の検討を始めたのです。
――社内報のコンセプトはどのように決めたのでしょうか?
菅さん:Web社内報の導入を決める前に、社員にヒアリングやアンケートを実施したのです。若手世代にヒアリングをしてみたらWebに抵抗は少なく、テキストより動画のほうがいいという声が多かったですね。社内報を読んだからといって次の日から行動が変わるわけじゃなく、見たい時に楽しく見られればいいという声も、参考になりました。
西田さん:一方で、私がベテラン世代にヒアリングした結果は、紙の社内報が意外と見てもらえていなくて、見ても関心のあることだけパラパラっと見るという人が多かった。逆にWebに対して否定的な意見は思ったほど多くなかったので、従業員のニーズを踏まえてWebの方がいいと結論づけました。
菅さん:ビジョンに共感してもらうにも、まずは会社への帰属意識やエンゲージメントを高めることが必要だと思っていました。会社との距離を縮めて「うちの会社やっぱりいいな」と思ってもらうには、まず見てもらうことが先決です。あまり堅苦しい内容にしても見てもらえないという声もあり、そこから「テレビ番組のようなテイストの社内報」というコンセプトを打ち出しました。
西田さん:役員へのプレゼンに際しては、具体的に理解してもらえるようしっかりと事前準備を行いました。画面イメージなどを示してわかりやすく伝え、コンセプトを明確に説明したので議論も拡散しませんでした。何が課題で、その解決のためにこういうことをやりたいという目標をしっかりと設定し、軸をぶらさずにいこうと、チーム内でしっかりと意思統一したのが良かったと思います。
――Web社内報ツールを選ぶ際には、どのように比較検討されましたか?
菅さん:5~6社のツールをピックアップして比較検討しました。CMSは全然触ったことがなかったので、やっぱり重要視したのは操作性です。また、セキュリティ面を重視してシングルサインオンが可能なことや、休憩中などにスマホで見てもらうためにマルチデバイスという点はマストでした。
デモも体験して他社製品と比較しましたが、操作性の部分で社内報アプリはマニュアルをそんなに見なくても、直感的に使えるところが良かったです。ポップなテンプレートがたくさんあるので、他のツールとは違って、頑張って作り込まなくても見栄えの良い記事ができるという点も、使いやすそうだと思いました。
理想とする機能を網羅していただけでなく、社内報アプリは導入後に乗り換えた企業がほとんどないということも安心材料となり、なんの迷いもなく社内報アプリが一番いいと感じました。
西田さん:選定はほぼ全て菅さんに任せていました。予算面がどうなのか不安もありましたが、実際にはなんの問題もありませんでしたね。社内報アプリの導入で役員を説得する決め手になったのは、読者の反応がリアルタイムで得られて、それを見ながら対策ができる点です。
――導入後のサポートについてはいかがでしたか?
菅さん:テンプレートのデザインを少し変えたいと思っても、私はソースコードの編集ができないのですが、ウィズワークスに相談したらすぐにサポートしてくれて、思い通りのデザインを表現することができました。他にもプラスアルファの機能について相談したり、コンテンツづくりや表現の面でも、アドバイスや代替案などを提案したりしてもらえたのは大きかったです。
気軽に見られるコンテンツで若手社員の閲覧数も伸びる
――オープンしたときの社内の反応はいかがでしたか?
菅さん:インパクトは大きかったですね。閲覧数では社員の6割が見てくれて、そこで認知はしてもらえたと思います。無事オープンできて安心しました。その後も4割程度で推移して、安定的に見てもらえています。紙の社内報と継続性を持たせるために、バックナンバーをすべてWeb社内報で見られるようにアーカイブしました。そのおかげで若手だけではなく、40代以上の社員にも人気がありますね。
西田さん:ベテラン世代にとっては、その時代の出来事や雰囲気を振り返ることができるので、アーカイブは大正解でした。ただ、全ての号に記事内容や登場人物名のインデックスをつける作業では、菅さんがものすごく苦労していましたが(笑)
菅さん:新しいコンテンツについては、知っている社員が登場すれば見てもらえるので、社員紹介や職場紹介のサムネイルづくりでは、とにかく人の顔を出すことを重視して、意識的に出演者を目立たせるような構成・デザインにしました。その結果、閲覧数を伸ばすことができました。それから、「キューたす」というキャラクターを作ったのですが、それも認知度を上げる助けになったと思います。
西田さん:タイトルに「しくじり先生」や「初耳学」といったテレビ番組名をお借りして、聞いてどんな企画かわかるようにしたコンテンツもあります。これもただ興味を引くだけではなく、社内報とは別に、従業員エンゲージメント調査も行っていて、その結果を踏まえて課題を解決するために、どんな番組にするのかを考えて構成しています。
「しくじり先生」はベテラン社員の失敗経験を伝える企画です。アンケートなどを通じて若い世代が失敗をしたくない傾向があるのを感じていました。今、マネージャーになっている人も若いときに失敗を重ねている。失敗してもいいんだよというのを伝えたかった。これはビジュアルも相まって話題になりましたね。
菅さん:最近始めた「現場Scoop!」という現場からもらった写真と情報で構成する企画が、内容はユルめですが、他の現場も知りたいというニーズに応えているので、反応が大きく伸びていますね。
――動画もしっかりと活用されていますね。
菅さん:同じく現場を紹介する「現場最前線」という動画企画では、外部に映像制作を依頼しています。現場選定やシナリオは一緒に考えて、毎回同じにならないように気をつけながら作っています。これも他の現場が動画で見られるので反響は大きいですね。
自分たちの現場が選ばれたら嬉しいというのもあると思います。まるでテレビ番組みたいだと、期待を持って取材を受けてもらえることもあります。登場してくれた人が喜んでくれるのが、作る側としては一番うれしいです。
西田さん:「現場最前線」への従業員の認知はとても高まっています。当社の社員はシャイな人が多くて、自分から手は挙げないけれど、お願いするとこちらが期待している以上に頑張ってくれることが多いです。やっぱり現場の皆さんはそれぞれの思い、誇りをもって仕事をしていて、私は毎回そこに感動を覚えるので、それをしっかりと他の従業員の皆さんに伝えていければと思っています。
――そうした番組が、社内報アプリだからできたというのはありますか?
菅さん:そうですね。企画を考える時は、社内報アプリの機能は度外視して、自分たちが何をしたいのかをまず考えていますが、実現したいと思った企画が社内報アプリでできなかったことは、ほぼありません。実現が難しそうな時でもウィズワークスに相談するとこんなやり方があると提案していただけるので、障害は感じないですね。
西田さん:Web社内報として社外の人にも見せたいくらい、企画やビジュアルがキャッチーで面白いものに仕上がっています。それができたのは、社内報アプリの柔軟性が高い点が大きいと思います。
UU数やPV数を把握して次の企画や課題解決に活かしていく
――Web社内報の導入で社内報制作はどう変わりましたか?
西田さん:紙の社内報の時はつねに時間に追われて、記事が間に合わない場合は諦めるしかなかったのですが、Webの場合には発行スケジュールを組んでいても柔軟に対応ができます。文字数も制限がないので、やりたいことができるようになりました。
菅さん:社内報アプリの導入で一番助かっている点は、UU数やPV数が見られることで、ニーズを拾いながら次の企画を考えられる点です。たとえば現場技術員がどの企画を見ているのかわかるので、そこからヒントを得て次の企画を検討していきます。この記事は見る、これは見ないということ自体が、社員の現在のモチベーションを分析する点で有効な手段になっているので、うまく使っていきたいです。
西田さん:ただ、まだ全従業員が見てくれているわけではないのでもっと多くの人に見てもらいたいです。従業員のエンゲージメント調査の結果もあまり変わっていません。現場の人は忙しくて閲覧数が上がらないケースも多く、改善の余地はたくさんあると考えています。
――お二人は、社内報のどんなところにやりがいや面白さを感じていますか?
菅さん:社内報は見る義務がないメディアなので、閲覧数のデータには社員の意識がストレートに反映されていると思います。それを素直に受け止めて、なぜその企画が人気なのかを実際にヒアリングなどで確かめていけるのが、Web社内報の面白さだと思います。その結果から社員の考えや悩み、課題などを探って、インナーブランディング全体に生かす基盤となるツールとして、社内報アプリを生かしていきたいです。
西田さん:先程の「現場最前線」の動画はYouTubeに公開しているので、対外的な影響も大きいと思っています。今回のWeb社内報では現場のリアルを伝えるというコンセプトも掲げています。若い世代は飾ったものよりリアルを知りたいと思っている。ありのままを外にも公開していますが、東急建設の社員っていい人が多いなとか、すごくいい取り組みをしているなというのを社内外に感じてもらえるとうれしいですね。
――今後、どのようなWeb社内報にしていきたいですか?
菅さん:それぞれの社員が好きな企画があって、それを見るとモチベーションが上がったり、日常業務を離れて物事を考えるきっかけになったりするようなコンテンツが揃っている場にしたいです。内勤・外勤の壁を取り払ったり、会社や仲間を好きと思ってもらえたりビジョンに共感してもらえれば、一番うれしいです。
西田さん:登場する従業員が「出てよかったな」と思ってもらえる番組にしたいです。作っている側も楽しんでいないと楽しさは伝わらないので、出る人もつくる人も楽しめるものが理想だと思います。これからさらに社内の雰囲気を良くしたり、お互いが一歩踏み込んで助け合ったり、尊重し合えるようになる会社にしていくために、インターナルコミュニケーションを通じて、良い雰囲気を醸成できるようにしていきたいですね。
――ありがとうございました。